台風・水害で臨時休業、その日の給料は必要?|「災害だから払わなくてよい」は誤解、休業手当の正しい考え方

令和8年熊本地震、および令和8年8月の千葉県豪雨災害により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧と、皆さまの安全を心よりお祈りいたします。

近年は、地震に加えて、台風や線状降水帯による大雨、水害が各地で相次ぎ、急に会社を臨時休業する判断を迫られる場面が増えています。そのとき悩ましいのが、休ませた日の給料や休業手当です。「災害だから払わなくてよい」とも、「休ませたら必ず6割払う」とも、実は言い切れません。経営者・人事労務のご担当者に向けて、自然災害による休業と賃金・休業手当の考え方を、ケース別に整理します。

まず前提|休業手当とは

会社の都合で従業員を休ませたとき、労働基準法は平均賃金の6割以上の「休業手当」の支払いを義務づけています(労働基準法第26条)。ただし、これが必要になるのは「使用者の責めに帰すべき事由」による休業の場合です。

ここでいう「使用者の責めに帰すべき事由」には、不可抗力は含まれません。不可抗力とは、次の2つをどちらも満たすものとされています。

  • その原因が事業の外部から発生した事故であること
  • 通常の経営者として最大の注意を尽くしても、避けることができない事故であること

自然災害による休業が休業手当の対象になるかは、この「不可抗力といえるか」で判断が分かれます。

自然災害でも「必ず不要」ではない|ケース別の考え方

厚生労働省の考え方をもとに整理すると、同じ災害でも、休業の理由によって結論が変わります。

休業のパターン休業手当の扱い(原則)
事業場の施設・設備が直接被害を受け、復旧が難しく休業する(地震で社屋が損壊した、浸水で設備が使えないなど)不可抗力に当たり、支払い義務は生じにくい
施設に被害はないが、取引先の被災や鉄道・道路の寸断で、仕入れ・納品ができず休業する原則として使用者の責めに帰すべき事由に当たり、支払いが必要になりやすい
施設に被害はなく、会社が予防的・自主的に休業を決める会社の判断による休業として、支払いが必要になりやすい

ポイントは、「台風が来たから一律に払わなくてよい」わけではないということです。特に、施設が無事なのに間接的な理由や予防目的で休ませる場合は、休業手当が必要になりやすい点に注意が必要です。

また、間接的な理由による休業でも、在宅勤務や別業務への振り替えなど休業を避ける努力を尽くしてもなお避けられなかったといえる場合は、不可抗力と認められる余地があります。逆に、その努力をせずに休ませると、支払いを求められやすくなります。

「社員が出勤できない」ときは別の問題

混同しやすいのが、会社は営業しているのに、交通機関の停止や避難などで社員が出勤できないケースです。これは会社側の休業ではなく、本人が労務を提供できない状態なので、原則としてノーワーク・ノーペイ(働いていない分の賃金は発生しない)となり、休業手当の対象にもなりません。

ただし、会社には従業員の安全に配慮する義務があります。危険が予想されるなかで無理に出勤させて事故が起きれば、会社の責任が問われることもあります。賃金の損得だけでなく、安全を最優先に判断することが大切です。

給料への影響と、有給の扱い

休業手当が不要なケースでも、給料への影響は雇用形態で変わります。月給制で、その日がもともと会社の休日であれば月給は変わりません。休業手当が必要なケースでは、平均賃金の6割以上を支払います。

なお、「休んだ日は有給を使わせればよい」と考えがちですが、会社が本人の同意なく一方的に有給を充てることはできません。有給を使うかどうかは本人の意思によります。災害時にそなえて、あらかじめ特別休暇の仕組みを整えておく方法もあります。

会社が今からできる備え

いざというときに迷わないために、平常時に次の点を決めておくと安心です。

【災害時の労務対応チェック】
☐ 就業規則に、災害時の休業と賃金・休業手当の取扱いを定めている
☐ 臨時休業を判断する基準(警報・避難情報など)と決定者を決めている
☐ 従業員への連絡方法(安否確認・出勤可否の連絡ルール)がある
☐ 在宅勤務や時差出勤など、休業を避ける手段を用意している
☐ 有給・特別休暇をどう扱うかの方針を決めている
☐ 「無理に出勤させない」安全最優先の方針を周知している

災害時の休業や賃金の取扱い、就業規則への反映は、当事務所の相談事例でもよくいただくテーマです。判断に迷うときは、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

賃金の話だけでない|被災した従業員への柔軟な配慮を

災害のあとは、従業員自身やその家族が被災し、後片づけや役所の手続き、子どもの世話などで、平常どおりに働けないことも少なくありません。休業手当を「払う・払わない」だけで捉えるのではなく、働き方そのものを柔軟にする配慮が、こうした時期には大きな意味を持ちます。

たとえば、次のような対応が考えられます。

  • フレックスタイム制や時差出勤|出退勤の時間に幅をもたせ、復旧作業や家庭の事情と両立できるようにする(フレックスは労使協定などの準備が必要なため、平常時に整えておくと、いざというときに活かせます)
  • 在宅勤務・一部リモート|出社が難しくても働ける環境があれば、休業を避けつつ収入も守れます
  • 特別休暇や有給の取得しやすい運用|被災した従業員が、気兼ねなく休みを取れるように配慮する

これらは必ずしも法律上の義務ではありませんが、大変な状況にある従業員を会社が支える姿勢は、長い目で見た信頼や定着につながります。ルールを守ることと、人に寄り添うこと。その両方を意識して対応したいところです。

まとめ

自然災害による休業の休業手当は、「不可抗力といえるか」で判断が分かれます。施設が直接被災して休むなら支払い義務は生じにくい一方、施設が無事なのに間接的な理由や予防目的で休ませる場合は、支払いが必要になりやすいのが原則です。「災害だから払わなくてよい」と早合点せず、休業の理由ごとに整理することが大切です。水害や台風が増えているいまだからこそ、休業の判断基準と賃金の取扱いを、平常時に決めておくことをおすすめします。あわせて、被災した従業員に柔軟に対応できる体制を整えておくと、安心して働ける職場づくりにもつながります。

「台風で休みにしたら給料はどうなる?」「うちの就業規則で災害時の対応は決まっている?」と気になる経営者・ご担当者の方へ。

Jinji社会保険労務士法人では、災害時の休業・休業手当の判断、就業規則への災害対応の反映、活用できる助成金のご案内まで、貴社の状況に合わせてご相談を承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。

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