給与計算の「扶養人数」で迷わない|16歳未満・ひとり親・障害者の数え方

給与計算の担当になって最初につまずきやすいのが、「扶養は何人で計算すればいいのか」という疑問です。従業員から「子どもが生まれたのに扶養が増えていない」「妻を扶養に入れたのに手取りが変わらない」と聞かれ、答えに詰まったことはないでしょうか。実は、税金の扶養と社会保険の扶養は、数え方も判定の考え方もまったく別物です。この記事では、給与の源泉徴収で使う「税金の扶養人数」の数え方を、はじめての人でも分かるように整理します。16歳未満の子ども、ひとり親、障害者といったよく迷うケースも具体的に解説します。

まず押さえる|税金の扶養と社会保険の扶養は別物

「扶養」という同じ言葉を使っていても、税金(所得税・住民税)と社会保険(健康保険)では、判定の物差しが違います。ここを混同すると、「片方では扶養、もう片方では扶養から外れる」という一見ちぐはぐな状態が起こり、従業員からの問い合わせにつながります。

  • いつの収入で見るかが違う|税金は「その年1月から12月の実績」で判定します。一方、社会保険は「これから先1年間の見込み」で判定します。過去を見るか、未来を見るかという根本的な違いです
  • 社会保険は「これからの見込み」で見る|社会保険の被扶養者は、これから先の年収の見込みがおおむね130万円未満(60歳以上や障害のある人は180万円未満、19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く。)は、150万円未満)かどうかが目安です。過去の実績ではなく、これからの見込みで判断する点が、税金と大きく違います

たとえば、配偶者が年の途中まで働いていて、その年はある程度の収入があった場合、税金はその年の実績で判定するため、その年は扶養に入れないことがあります。一方、社会保険は退職後のこれからの見込みで見るため、退職して収入がなくなれば扶養に入れる、ということが起こります。「税と社保で扱いが違うのは、判定する時点が違うから」と理解しておくと、説明がぶれません。

給与計算で使うのは「扶養親族等の数」

毎月の給与から天引きする所得税(源泉所得税)は、国税庁の「源泉徴収税額表」を使って決まります。このとき縦の欄で使うのが「扶養親族等の数」です。この人数が1人増えると、天引きする所得税は少なくなります。従業員が言う「扶養が増えたはずなのに手取りが変わらない」は、この人数に反映されていないことが原因であることが多いのです。

この「税金の扶養人数」は、担当者が家族構成を調べて決めるものではなく、従業員が提出した「扶養控除等(異動)申告書」を見て判断します。申告書に扶養家族として書かれている人を数える、というのが基本の考え方です。だからこそ、申告書を正しく書いてもらい、家庭に変化があったら出し直してもらうことが、正しい人数の第一歩になります。

「扶養親族等の数」は、申告書をもとに、次の2つを合計した人数が基本です。

  • 源泉控除対象配偶者|申告書の「源泉控除対象配偶者」欄に書かれた配偶者(いれば1人)
  • 控除対象扶養親族|申告書に書かれた、生計を一にする16歳以上の親族(子ども、親、祖父母など)

この基本の人数に、後で説明する障害者・ひとり親などの加算が乗っていきます。誰を扶養として書けるか(収入の条件など)は申告書の案内に沿って従業員本人に判断してもらい、会社はその申告書にもとづいて人数を数える、という役割分担で考えると整理しやすくなります。

そもそも扶養人数を使わない「乙欄」もある

ここで一つ、はじめての人がつまずきやすい分かれ道があります。実は、扶養人数を使って所得税を計算するのは、扶養控除等申告書が提出されている場合(源泉徴収税額表の「甲欄」)だけです。申告書が出ていない人は、扶養人数とは関係なく「乙欄」という別の欄で計算します。

  • 甲欄|扶養控除等申告書を提出している人に使います。ここまで説明してきた扶養人数を反映して、所得税を計算します
  • 乙欄|申告書を提出していない人に使います。扶養人数は考えず、甲欄より高めの税額を天引きします

乙欄が問題になる典型が、掛け持ち勤務(ダブルワーク)の従業員です。扶養控除等申告書は、いくつも掛け持ちしていても「1か所(主たる給与)」にしか提出できません。そのため、他社をメインにしている従業員が自社で働く場合、自社は乙欄で計算することになります。この人について「扶養家族がいるのに人数が反映されていない」と悩む必要はなく、そもそも乙欄では扶養人数を使わない、というのが答えです。

逆にいえば、扶養控除等申告書が出ているかどうかが、扶養人数を使う(甲欄)か使わない(乙欄)かの分かれ目です。新しく入った従業員から申告書を受け取れているか、まず確認する習慣をつけると、この取り違えを防げます。

なお、給与ソフトによっては、この「扶養親族等の数」を人数で直接入力するのではなく、扶養している家族一人ひとりの情報(続柄・生年月日・障害の有無など)を登録すると、ソフトが自動で人数を計算してくれるタイプもあります。この場合、担当者が人数を数える必要はありませんが、家族の情報を正しく登録できているかが結局のカギになります。どちらのタイプでも、これから説明する数え方の考え方を知っておくと、入力ミスや登録もれに気づけるようになります。

迷いやすいケース1|16歳未満の子どもは人数に入れない

もっとも問い合わせが多いのが、これです。16歳未満の子どもは、毎月の源泉徴収の「扶養親族等の数」には含めません。「子どもが生まれたのに扶養人数が増えない」「小学生の子がいるのに数えないのはおかしい」という声が出るのはこのためです。

理由は、16歳未満の子どもには所得税の扶養控除がないからです(かつての年少扶養控除は廃止され、代わりに児童手当などで支援する形になっています)。そのため、毎月の所得税の計算では人数にカウントしません。

ただし、「数えないから申告も不要」ではありません。16歳未満の子どもは、扶養控除等申告書の下段にある「16歳未満の扶養親族」の欄に記入してもらう必要があります。この情報は、住民税が非課税になるかどうかの判定などに使われるためです。「所得税では数えないが、書類には書く」と覚えておくと、記入もれを防げます。

迷いやすいケース2|ひとり親・寡婦は人数を1人加算

従業員本人がひとり親に当てはまる場合、「扶養親族等の数」に1人を加算します。子ども1人を育てるひとり親なら、子ども(16歳以上なら扶養親族として1人)とは別に、ひとり親であること自体で1人が上乗せされる、というイメージです。所得税の負担を軽くするための配慮です。

ひとり親に該当するのは、婚姻していない、または配偶者と死別・離婚などをした人で、生計を一にする一定の子どもがいる、といった条件を満たす場合です。過去に結婚していたかどうかを問わず、男性でも女性でも対象になります。かつての寡婦・寡夫控除が整理され、令和2年から「ひとり親控除」として設けられたものです。

これとは別に、ひとり親に当てはまらない一定の女性は「寡婦」として、やはり1人が加算されます。従業員が離婚・死別を経験したときは、この加算が反映されているかを確認したいポイントです。

迷いやすいケース3|障害者は該当するごとに加算

障害者に関する加算は、少し立体的です。該当するごとに、それぞれ1人ずつ加算していきます。

  • 従業員本人が障害者の場合|1人を加算します
  • 扶養している家族に障害者がいる場合|その家族1人ごとに1人を加算します。ここが重要で、16歳未満の子どもが障害者の場合でも、この障害者としての加算はカウントします。16歳未満は扶養の人数には入れないのに、障害者としては数える、という点が混乱しやすいところです
  • 同居している特別障害者がいる場合|さらに手厚い加算の対象になります

たとえば、本人が障害者で、障害のある15歳の子どもを扶養している場合、子ども本人は扶養人数に入らなくても、本人の障害で1人、子どもの障害で1人が加算されます。加算のもれは天引きする所得税が本来より多くなり、従業員の手取りに直接響くため、申告書の記載を丁寧に確認することが大切です。

実務でやるべき3つのこと

  1. 扶養控除等申告書の「16歳未満」欄まで確認する|16歳未満の子どもがいる従業員には、本体の人数に入れない分、下段の欄への記入をうながします。記入もれは住民税の判定に影響します
  2. 家庭の変化があったら人数を見直す|結婚・出産・離婚・死別、子どもの就職、親の同居など、家庭の状況が変われば扶養人数も変わります。年末調整のときだけでなく、変化のたびに申告書の再提出を案内する運用にすると、もれが減ります
  3. 税と社保をセットで確認する|配偶者を扶養に入れる相談を受けたら、「税金の扶養」と「社会保険の扶養」の両方で判定が必要です。片方だけ手続きして、もう片方がもれるトラブルは実際によくあります

すぐ使える|扶養人数の数え方チェックリスト

給与計算で「扶養親族等の数」を確定させるとき、次の順番で確認すると迷いにくくなります。

  • ☐ 扶養控除等申告書は提出されているか(未提出なら「乙欄」で、そもそも扶養人数は使わない)
  • ☐ 源泉控除対象配偶者はいるか(いれば +1)
  • ☐ 16歳以上の控除対象扶養親族は何人か(人数分を加算)
  • ☐ 16歳未満の子どもは「16歳未満」欄に記入したか(本体の人数には入れない)
  • ☐ 本人がひとり親・寡婦に当てはまるか(当てはまれば +1)
  • ☐ 本人が障害者か(当てはまれば +1)
  • ☐ 扶養家族(16歳未満を含む)に障害者はいるか(1人ごとに +1、同居特別障害者はさらに手厚く)

チェックの結果、判断に迷う項目が出てきたら、自己流で処理せず確認するのが安全です。自社の給与計算や扶養の判定にあてはめた具体的な相談は、当事務所の相談事例でもよくいただくテーマです。お問い合わせからお気軽にご相談ください。

まとめ

税金の扶養人数は、従業員が提出した扶養控除等申告書を見て、「源泉控除対象配偶者+16歳以上の控除対象扶養親族」を土台に、ひとり親・寡婦・障害者などの加算を積み上げて数えます。そもそも申告書が出ていない人は「乙欄」となり、扶養人数は使いません。つまずきやすいのは、16歳未満の子どもを本体の人数に入れない一方で、その子が障害者なら障害者としては加算する、という二段構えの部分です。さらに、社会保険の扶養は「これから1年の見込み」で判定するため、税金とは結論が食い違うことがあります。数え方の型を一度おさえてしまえば、従業員からの問い合わせにも落ち着いて答えられるようになります。判断に迷うケースは、税と社保の両面から確認するのが確実です。

「この従業員の扶養人数、これで合っている?」「税と社保で扶養の扱いが違って、説明に困る」というご担当者・経営者の方へ。

Jinji社会保険労務士法人では、給与計算の扶養人数の判定、扶養控除等申告書のチェック、税と社会保険の扶養の整理まで、貴社の状況に合わせてご相談を承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。

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