年次有給休暇とは?付与日数・5日取得義務・パート比例付与・退職時の扱いまで社労士が解説

はじめに

2026年現在も、年次有給休暇の管理は労務管理上の重要なテーマです。
年5日の取得義務違反や就業規則・管理簿の不備は、行政指導や罰則の対象となり得るため、「なんとなく管理している」場合は注意が必要です。

採用・育成・評価・トラブル対応など、経営者や人事担当者が日々対応すべき業務は多岐にわたります。その中で、年次有給休暇の管理は後回しになりがちです。
しかし、有給休暇の管理ミスは、退職時のトラブル、行政指導、罰則リスクにつながる可能性があります。

本コラムでは、年次有給休暇の基本ルールから、パートタイム労働者への比例付与、年5日取得義務、退職時の実務対応まで、社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 年次有給休暇の付与要件と基本ルール
  • パート・アルバイトの有給休暇(比例付与)の考え方
  • 年5日取得義務の仕組みと違反リスク
  • 有給休暇管理簿・就業規則で必要な実務対応
  • 退職時の有給休暇消化への対応ポイント

1.年次有給休暇とは?まず基本をおさえましょう

年次有給休暇(年休)とは、労働基準法第39条に定められた、労働者が賃金を受け取りながら休暇を取得できる権利です。
これは「会社に余裕があるときに認める休み」ではなく、一定の要件を満たせば法律上当然に発生する権利です。

正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員などにも適用されます。

厚生労働省も、年次有給休暇は「働く方の心身のリフレッシュを図ることを目的とする制度」であり、原則として労働者が請求する時季に与えるものとしています。
そのため、「忙しいから取りづらい」「パートだからそこまで厳密に考えなくてよい」といった感覚的な判断は危険です。

有給休暇が発生する2つの要件

1)6か月継続勤務していること

雇い入れの日から6か月間継続して勤務していることが必要です。
試用期間中であっても、雇用関係が始まっていれば継続勤務期間に含まれます。

2)全労働日の8割以上出勤していること

その6か月間の全労働日の8割以上を出勤している必要があります。
なお、2回目以降の付与については、それぞれの基準日前1年間の出勤率が8割以上であることが必要です。

8割出勤の計算で「出勤扱い」となるもの

  • 業務上の負傷・疾病による療養のための休業(労災)
  • 産前産後休業
  • 育児休業
  • 介護休業
  • 年次有給休暇を取得した日

8割出勤の計算で「全労働日から除外」となるもの

  • 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
  • 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日
  • 休日労働させた日
  • 法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日

一方で、私傷病による休職期間は、原則として出勤日数にカウントされません。
ただし、就業規則等で出勤扱いとする定めを置いている会社もあるため、自社ルールの確認が必要です。

有給取得を理由とする不利益取扱いは禁止

有給休暇を取得したことを理由に、従業員を不利益に扱うことは法律上問題となります。
例えば、次のような対応は禁止されています。

  • 有給取得日を欠勤扱いにして皆勤手当を不支給にする(原則禁止)
  • 有給取得を理由に賞与を減額する(禁止)
  • 「旅行のため」などの理由によって有給申請を拒否する(禁止)

2.年次有給休暇の付与日数(何日もらえる?)

通常付与の基本ルール

正社員や、週5日以上勤務する労働者、または週30時間以上勤務する労働者については、6か月継続勤務かつ8割以上出勤の要件を満たすと、初回は10日の年次有給休暇が付与され、この付与された日を基準日といいます。
その後は勤続年数に応じて付与日数が増え、最大20日となります。


(出典|厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

有給休暇は繰り越しできる?(時効2年)

年次有給休暇の請求権の時効は2年です。
前年度に取得しなかった有給休暇は翌年度に繰り越されます。
そのため、実際の残日数を把握する際は、「今年付与された日数」だけでなく「前年からの繰越分」も含めて管理する必要があります。

分割付与・一斉付与をしている会社は基準日管理に注意

会社によっては、入社時に有給を分割して付与したり、基準日を全社で統一したりしている場合があります。
このような運用も可能ですが、分割付与をした場合は、その最初の付与日が基準日となるため、通常の法定付与とは異なる管理が必要になります。
また、基準日を統一している場合も、入社時期によっては付与日の整理が複雑になりやすいため、制度設計と実際の運用を一致させておくことが重要です。

前年繰越分は5日取得義務の対象になるのか

結論からいうと、前年からの繰越分そのものは、5日取得義務の対象にはなりません。
5日取得義務の対象となるのは、その年度に新たに10日以上の年次有給休暇が付与された労働者です。
ただし、実際に取得した有給休暇が繰越分か当年分かを問わず、取得日数として5日に算入することは可能です。

3.パート・アルバイトにも有給休暇はある?(比例付与)

「パートやアルバイトには有給がない」と考えている場合、それは誤りです。
週所定労働日数が4日以下で、かつ週所定労働時間が30時間未満の短時間労働者には、勤務日数に応じた比例付与が行われます。

比例付与の適用条件

比例付与の対象となるのは、次のいずれにも該当する労働者です。

  • 週所定労働時間が30時間未満
  • 週所定労働日数が4日以下
    または
    年間所定労働日数が216日以下

比例付与日数一覧表

※表中太枠で囲った部分に該当する労働者が、5日の取得義務の対象です。


(出典|厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

パターン別の実務例

事例①:週4日勤務・勤続2年6か月の場合

付与日数は9日です。
「ずっとパートで週4だから同じ日数のまま」というわけではなく、勤続年数が長くなると付与日数も増えていきます。

事例②:正社員から週3日勤務のパートに変更した場合

有給付与日数が変わるのは、変更後すぐではなく、次回の基準日からです。
つまり、「変更後に迎える最初の基準日」から新しい日数で付与され、勤続年数は通算されます。

例として、2024年10月1日に通常付与で11日付与され、2025年4月1日に正社員からパートとなった場合、2025年10月1日の付与は比例付与で6日となります。

事例③:週4日勤務のパートから正社員に転換した場合

こちらも、次回の基準日から通常付与に切り替わります。
勤続年数は通算されます。

例として、2024年10月1日に比例付与で7日付与され、2025年4月1日に正社員へ転換した場合、2025年10月1日の付与は通常付与で11日となります。

シフト制で勤務日数が変動する場合の注意点

シフト制で勤務日数が変動する場合は、原則として基準日直前の1年間の所定労働日数で判断します。
日数の見込みや感覚で処理すると、付与漏れの原因になるため注意が必要です。

4.年5日取得義務とは?違反時のリスク

2019年4月1日施行の改正労働基準法により、年間10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者について、使用者は年5日を確実に取得させる義務を負います。

この対象には、管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。

労働基準監督署の監督指導において、 法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導がされ、改善を図ることとされています。
違反した場合には、1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。

いつまでに取得させるか

5日取得義務の「1年間」は、会社の年度単位ではなく、各従業員の有給休暇が「年間10日以上付与された日」から起算します。ここを誤ると、実務上の管理ミスにつながりやすくなります。

特に、分割付与や基準日の統一をしている場合は、5日の取得期間が重複することがありますので注意しましょう。

基準日と取得期間の考え方

一般的なケース

  • 入社日:4月1日、基準日:10月1日(6か月後)に10日
  • 5日取得期間:10月1日~翌年9月30日

前倒し付与

  • 入社日:4月1日、基準日:4月1日(入社日)に10日
  • 5日取得期間:4月1日~翌年3月31日

分割付与

  • 入社日:4月1日、基準日:4月1日(入社日)に5日、10月1日に5日
  • 5日取得期間:10月1日~翌年9月30日
  • 翌年4月1日に11日付与
    →5日取得期間:翌年4月1日~翌々年3月31日
    ※翌年4月1日~翌年9月30日の期間に重複が発生

中途入社

  • 入社日:7月15日、基準日:1月15日(6か月後)に10日
  • 5日取得期間:1月15日~翌年1月14日

基準日統一

  • 入社日:4月1日、基準日:10月1日(6か月後)に10日、全社基準日:翌1月1日に11日
  • 5日取得期間:10月1日~翌年9月30日
  • 翌年1月1日に11日付与
    →5日取得期間:翌年1月1日~翌年12月31日
    ※翌年1月1日~翌年9月30日の期間に重複が発生

分割付与・基準日統一では「期間の重複」に注意

分割付与や全社基準日統一を行う場合、前の取得期間が終わる前に次の取得期間が始まる、期間の重複の状態が生じることがあります。

このような場合には、厚生労働省の考え方に基づき、重複期間を一本化して、期間の長さに応じて按分管理する取扱いが特例として認められています。
制度設計や管理方法に不安がある場合は、慎重な確認が必要です。

5日義務に算入できる取得方法とは

年5日取得義務に算入できるのは、次の方法によって取得した有給休暇です。

カウント方法内容の要約5日義務への算入
① 使用者による時季指定会社が意見聴取した上で取得日を指定◯ 算入可
② 労働者自身の請求労働者が自ら申請して取得した日数◯ 算入可
③ 計画年休労使協定による一斉取得など◯ 算入可
④ 半日単位年休労働者の希望 + 使用者の同意◯ 算入可(0.5日)
⑤ 時間単位年休労使協定で導入(年5日が限度)× 算入不可

会社が時季指定を行う必要がある場面

上記の表の②労働者本人の取得や③計画年休の合計が5日に満たない場合、①会社は時季指定を行って取得させる必要があります。
「管理していなかった」「気づかなかった」では済まされないため、日頃からの残日数管理と取得状況の確認が重要です。

年次有給休暇管理簿とは?作成義務と保存期間

年次有給休暇管理簿は、労働基準監督署の調査でも確認されることが多い実務書類の一つです。

2019年の労働基準法改正により、会社には年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存義務があります。
これは、年5日の取得義務の履行状況を客観的に確認できるようにするためのものです。

管理簿はExcelなどで作成しても問題ありませんが、基準日や取得状況が正確に把握できる形で管理することが重要です。

就業規則への記載と管理簿作成は必須

年5日取得義務に対応するためには、実務上、次の対応が重要です。

  • 時季指定を行う場合は、就業規則への記載が必要
  • 年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する必要がある
  • 管理簿はExcelやシステム管理でも可

管理簿に記載すべき主な項目

  • 取得時季
  • 取得日数
  • 基準日

基準日が複数ある場合は、その両方を記録しておきましょう。

会社は有給休暇の取得を拒否できる?

年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与える必要があります。
そのため、会社が一方的に取得を拒否することはできません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社には時季変更権が認められています。

もっとも、単に忙しい、人手不足であるといった理由だけでは足りず、代替要員の確保など、会社として可能な対応を尽くしていることが必要とされています。

5.有給休暇の計画的な活用が退職時トラブルを防ぐ

社労士への相談で多いのが、退職直前に従業員から「残っている有給をすべて消化して辞めたい」と申し出があるケースです。

よくある相談例

「勤続3年の社員から、残っている有給18日をすべて消化してから退職したいと言われました。引き継ぎもあり、業務が回りません。拒否できますか?」

このようなケースでは、原則として拒否はできません。
有給休暇は法律上の権利であり、退職予定者であることを理由に当然に制限することはできません。
また、退職日が決まっている場合は、変更先の時季を確保しにくいため、時季変更権の行使は通常難しくなります。

なお、残っている有給休暇を無制限に取得できるわけではなく、実際に取得できるのは退職日までの所定労働日の範囲内です。
たとえば、残日数が18日あっても、退職日までの所定労働日が10日であれば、取得できるのは10日までとなります。
そのため、引き継ぎや最終出社日の調整については、双方が納得できる形で早めに話し合うことが重要です。

退職時トラブルを防ぐための実務ポイント

1)有給残日数を日頃から正確に把握する

残日数をリアルタイムで把握し、従業員にも随時開示することが重要です。

2)退職申し出の段階で早めに整理する

退職の申し出があったら、次の点を早めに確認します。

  • 有給残日数
  • 引き継ぎの内容
  • 最終出社予定日
  • 退職日までのスケジュール

3)日常的に有給取得しやすい環境をつくる

退職直前にまとめて有給を消化するリスクを減らすためには、日頃から取得しやすい職場環境を整えることが大切です。

自社の有給管理は大丈夫?簡単チェック

こうしたトラブルを防ぐためには、自社の有給休暇の管理方法が適切かどうかを一度確認しておくことが重要です。

例えば、以下のような運用状況に心当たりはありませんか?

  • 有給休暇の基準日を正確に把握していない
  • 年5日の取得義務の管理を個別に行っていない
  • パート・アルバイトの比例付与を計算していない
  • 有給管理簿を作成していない
  • 退職時の有給消化でトラブルになったことがある
  • 就業規則に年5日取得義務の規定を入れていない

1つでも該当する項目がある場合、気づかないうちに法違反やトラブルのリスクを抱えている可能性があります 。
大きな問題に発展する前に、まずは現状の制度や就業規則を正しく整理しておくことが安心につながります 。

6.実務でよくあるQ&A

Q1.半日単位・時間単位の有給は5日義務に含まれますか?

半日単位年休は0.5日としてカウントできます。
一方、時間単位年休はカウントされません。たとえ「1時間×8回」で1日分相当になっても、5日義務の1日にはなりません。

Q2.年末年始の休暇を有給消化日にできますか?

もともと休日とされている日に、後から有給を充てることは原則できません。
ただし、就業規則上休日と明記されていない労働日については、労使協定による計画年休として扱える場合があります。

Q3.繁忙期なら有給取得日をずらせますか?

会社には時季変更権がありますが、これは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。
単なる人手不足や繁忙というだけでは足りず、代替要員の確保など、会社としてできる対応を尽くしていることが求められます。

Q4.有給取得を理由に皆勤手当を支給しないのは問題ですか?

原則として、年次有給休暇を取得したことを理由に皆勤手当を不支給とする取扱いは、問題となる可能性があります。

有給休暇は法律上認められた権利であり、その取得を抑制するような取扱いは慎重に判断する必要があります。

Q5.有給休暇は30分単位・15分単位で取れますか?

時間単位年休は、原則として1時間単位です。

そのため、15分単位・30分単位での取得は認められていません。なお、時間単位年休を導入するには、労使協定の締結が必要です。

おわりに

年次有給休暇の管理は、付与日数や年5日取得義務だけの問題ではなく、就業規則の定め方や日々の労務運用とも深く関わっています。

そのため、有給休暇の運用に不安がある場合は、有給管理だけでなく、就業規則や労務管理体制全体を見直すきっかけにすることが大切です。

Jinji社会保険労務士法人では、就業規則の作成・見直しから、日常の労務相談を含めた顧問支援まで、企業の実情に応じてサポートしています。

実際に、年次有給休暇の運用確認をきっかけに、就業規則の見直しや労務管理体制の整理をご依頼いただくケースも少なくありません。

有給休暇の運用を含めて就業規則全体を見直したい、または労務トラブルを未然に防げる労務管理体制を整えたいとお考えの企業様は、お気軽にご相談ください。

ご相談はこちら